過去日記 2004年 5月


2004-05-01 2日と23時間

新職場デビューやらジャクソン・ブラウン来日やらで、もう嵐のような毎日。くわえてiBookまで不調ときて生活大混乱で、しばらく更新できませんでした。

あ、iBookですが28日の夜、閉店の9時まぎわの銀座に持ち込んだところ、きょう5月1日の昼ごろ携帯に「直りました」って連絡が入りました。さっそく仕事帰りに引き取ってこれを書いてるんですが、今回は中2日、正味2日と23時間で退院です。正直もう連休明けまで待つのかと思ってただけに、ちょっとうれしい :-)

まあこの故障に関しては彼等もかなり慣れてきてる様子ですけど、都心に出やすい地域に勤めてる人にはApple Store, Ginzaへの持ち込み修理って結構便利かも。

2004-05-02 オーチャードホールのジャクソン・ブラウン

ここを更新してなかった時期も、結構まめに別のサイトは更新してたんですよ。ジャクソン・ブラウンが来日中だったので、今更新しないとサイトやってる意味がありませんからね :-)

東京でのショウは結構見に行ってるんですが、今回のオーチャードホールはかなり特別でした。席がかなり良くて、初日は2列目、23日の2日目は5列目のド真ん中という、過去歴代ベスト5に余裕で入る良席で、これだけでもかなり幸せだったんですが。

加えて今回のツアーが、日本では初めてのアコースティック・ソロツアーだったというのも。本人のアコギかエレピの弾き語りだけで正味2時間を超えるステージ。普通なら貧相に聴こえそうなもんですが全然逆でした。どの曲もさっき出来たばかりみたいなみずみずしさで。

会場のオーチャードホールも良かった。椅子が良いとか荷物を預かってくれるとかってのも有り難いけど、何より音響が良かった。ライ・クーダー並みに大量にステージに並べたアコースティックギターを、曲毎にふさわしい音色で選んで持ち替えてるのが良くわかりました。爪弾く曲は繊細に響くやつ、ジャカジャカ鳴らす曲はガッツのある音で...

くどくどしたアレンジがない分、歌そのものの力が凝縮したみたいに、さらさらと響きわたってましたよ。久しぶりにこの人凄いなと心底思いました。このシンプルさ加減が、とんでもなく豊かな音楽になっていて。

2004-05-03 旅の写真機

話が前後しますが、バリ島では結構いい感じに写真撮ってたんですよね。最初は銀塩のカメラも1台くらい持ってくつもりでしたが、気がついたら持たずに出発してるしで、結局はデジカメだけ。

でも旅程の半分くらいのところでスマートメディアが逝ってしまいました。銀塩を持たないと決まった時点で、本当はあと1枚くらい買っとくかという気分もありましたが、まあいいやみたいな感じで現地入りしており、なのでこの時点で持ち帰れる写真はゼロです。

実物がないから言えるわけですが、いい絵がありました。良く晴れた明るい朝に前夜の大雨で濡れた茅葺き屋根の軒先からキラキラ落ちてくる水のしずくとか、田んぼの向こうの椰子の木の向こうをオレンジに染めて沈んでゆく太陽とか。基本的に熱帯って写真に向いています。

そんなものがすべてゼロになってしまって、その時だけは少し悲しかったけど。まあでもね。それは僕が見て確かめたので、たしかにここにあった光景だし。撮りたくなったら、また来ればいいのかな。そう思うと、また楽になりました。

バリ島に来るのは8年ぶりで、いろいろなものが変わっていたけれど、中には変わらないものもありました。いつか僕がまたここに来た時、いま見ているものがまだあるかどうかはわからないけど、あれば撮ればいいし無くてもその時そこにあるものを撮ればいいんだし。だから、今じゃなくても全然大丈夫なんだと。

旅先でそんな風に感じたのは初めてなんですが。なんででしょうかね。

2004-05-05 旅のコンピュータ

まあそんなこんなで休暇のバリ島ではゆるーい生活を送っていたわけで、iBookは持っていきませんでしたが全然問題なしだったというか、置いていったのは正解だったと思います。

とはいえ電卓程度の簡単な計算とかちょっとしたメモとりには、WorkPad 30Jが活躍してくれました。僕はいつも旅行中はノートを持ち歩いて日記みたいにいろいろ書き込むんですが、今回は買う暇がなかったのでもっぱらメモはWorkPadでとりました。

いま旅行中のことを、忘れないうちにあれこれ書き残しています。写真がないのでオンラインに載せるかどうかは微妙なんですが、同期したメモをiBookで読みながら書き物ができるのは、ちょっといいですね :-)

前の旅行では、直前にアプリを入れたせいか現地でいきなりハードリセット食らったので、今回はあえて安定第一で本当に特別なものは何も入れない状態で持っていったんですが、それでも十分だというか。仕事の旅行だと多分こうは行かなかったと思うけど、休暇だしね。

でも最も活躍した電化製品は、前日にダイソーで買った懐中電灯でしたとさ。あウブドって夜になると結構暗いんですよ。まあでもそういう暗闇があるところが良いのかもしれませんけど。

2004-05-04 Ubud 2004, Revisited

8年前にも同じバリ島のウブドに行ったことがあります。そのときは先のスケジュールも決めない、もっと気ままな旅でした。その後東京に戻ってずっと、僕はなんとかやってきたんで、今回のバリ島行きにはそのお礼参りみたいな意味が、一応すこしありました。

現地入りしたのがすでに夜で、翌日の昼からさっそく、ウブドの街角を歩きました。東京で予約したホテルは村の南のはずれあたりにあるんだけど、そこから8年前の滞在でお世話になった民宿みたいな宿屋が北のはずれあたりにあるので、地道に歩いて訪ねていったのです。

モンキーフォレストという名前のメインストリートを、南端からずっと北上したわけですが... さすがにホテルくらいの規模の建物は結構残っていますが、レストランなんかは随分と入れ替わってます。僕が通いつめていた店は、一つは別の名前に変わってしまい、スタッフも当時のことは知らない様子。でもそこで使っているテーブルは、砕いたタイルを天板にちりばめた、特徴も見覚えもあるものでした。

馴染みだったもうひとつの店は、まだ残っていたものの、通りの反対側に引っ越していました。内装も小奇麗になっちゃって、BGMのボッサや昔のジャズが普通に似合うような店になってた。もし名前まで変わっていたら、もう同じ店とはわからなくなってただろうな。

なんだか8年という時間を感じつつ、世話になっていた宿屋のあたりにたどりつきました。道すがらに昔どおりの看板が出てるので、まだやってるのだなと一安心しつつ、忘れかけていた道をたどります。やがて見慣れた小道に入り、宿の入り口が見つかりました。

8年前、ここは若夫婦がはじめたばかりの宿屋で、僕はバリ島にいた頃になんどかここにお世話になりました。その後ここんちはガイドブックに載るようにもなり、評判をたまに聞くようになりました。今回のバリ行きでも、最初にここに泊まることを考えたのですが。

でも直前に買ったガイドブックを見ると、なぜかここんちは掲載されていませんでした。以前に日本からのゲストが作ったホームページも最近は更新されてる気配がなくて。なので彼等が今でも宿屋をやっているのかどうか、僕はちょっと心配になっていたのです。まあここでまだやってるのは確かだとわかり、ひと安心。

とはいえ見つけた宿屋の入り口では、奥に誰かのいる気配も感じられず、ひっそりした雰囲気でした。内側に腕をつっこんで扉を開けて「こんちわー」とか言ってそのまま中に入ってみます。誰もいないのかな。

と思ったら庭の奥から「あらー!どうしたのー?」なんて声が。あらら奥さんいたんですか。って僕のこと覚えてるんですか? それって僕のほうが驚きますよ。どうですか儲かってます?なんて会話が思いがけなく。あ、奥さんは日本の人なので、本当にこんな感じの会話だったんですが。

本当に驚いたことに、僕は8年経った今でも顔を忘れられていなかったようです。また部屋を見せてもらって3日後からの3泊を予約したあと、庭の奥の東屋でお茶をもらって、しばらく無駄話。うーん。こんなことってあるんだなあ、とか思いながら、夕方のガムランのパフォーマンスにむけてまた坂をおりたのでした。

2004-05-06 やっぱり中の人

確かに、突然泣かせにかかることがあるよなー。あぶないあぶない。

2004-05-10 なぜかバリ島の写真

そういえば、デジカメは壊れたけど最終日に携帯のカメラで撮った写真があるので、載せてみます。

http://www.somethingfine.com/greetings/2004may/web.jpg

2004-05-12 VAIO pocketのユーザインターフェース

今週発表されたソニーからのiPod対抗商品VAIO pocket、なかなか興味深いです。少々高値だけどソニーの人のコメントとして「UIと基本性能で差別化できる」ということらしいんですが。

ソニーの製品って僕はわりと好きで、結構使いやすいものを出してる思うんですけど、そもそもソニーに限らず、日本でUIが良いから売れたって製品、あまり思い浮かばないんですよね。

僕が思うに、iPodってのはその逆というか、あのUIがあって初めて商品として成り立ってるっていう、かなり珍しいケースなのではないかと感じていて。だから明らかにiPod対抗の商品でUIに言及するってのは、ソニーはさすがにわかってるのかも、と思いました。

でも出してきたG-senseという仕組みは、iPodのホイールともソニー伝統のジョグとも違うものですね。これは実物を触ってみないと何ともいえない感じです。

VAIO pocket
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGF-AP1/feat2.html

記事の中ではポインティングデバイスという表現もされてたけど、これはどっちかというとソフトキーを画面全体に拡大しちゃったって感じに近いような。これだとiPodみたいな、つるんとした筐体デザインは作りにくそうかも。

2004-05-17 ううあのうたうやしのみのうた

適当にテレビのチャンネル変えてたら、てぃんさぐの花を誰かが歌ってますよ。「ううあ」ことUAさんが歌のおねえさんをやってる教育テレビの音楽番組でした。三線のおじさんと2人でね、その歌いっぷりが素直で奇麗なんで、じっと聴き入ってしまいました。

これ、僕は初めてみましたが、なんか良いんですよー。歌ってるのはそれこそ低学年の音楽の時間に習うような曲ばっかりで。でもそこから先がかなり変で。

まずそれぞれの曲のアレンジがまず、かなり変です。アコースティック楽器ばっかりで、シンプルというと聞こえが良いけどまあ、音数からいったらもうスカスカですな。唱歌の「うみ」が何故かシタールの伴奏でインディアン仕様になってたりとか。

でねー「ううあ」おねえさんの歌も、普段とは違うんですよこれが。一時期の怖い感じが見事なくらいなくなって、歌そのものになりかわったみたいな、すっきり系の歌唱。でさりげなく上手いんだ。まあそれでいて、格好は沖縄のキムジナーそっくりというのがまた不思議なんですけど(「ううあ」は南の島がふるさと、という設定らしい)。

そんなこんななんで、僕はやっぱり南向きの曲のほうが良い感じだと思いました。さすがに熱帯雨林で「一週間」テュリャテュリャテュリャリャてのも不思議すぎですよね。で一番好きになったのが「やしのみ」。変な鈴とカリンバだけ使うアレンジが斬新です。ストリーミングだとちょっと音が痩せちゃうけどね。

やしのみ - ○OoドレミノテレビoO○
http://www.nhk.or.jp/doremi/special/sumset.html?doremi02&lyrics02

ううあさん歌うまいよなー。この歌の2番の歌詞までちゃんと意識したのってはじめてだ。おねえさんがUAだってんでひいちゃってた人がいるかもですが、見ないと損ですぜ。

2004-05-23 ドレミノテレビ

あちこちらで微妙に反響呼んでるようで、えらく嬉しい昨今です。テレビであれを見れるってのはしあわせですよね。僕は音声をステレオアンプにつないで正座して見ましたよ(嘘。正座はしてません)。

そういえば以前ジェイムズ・テイラーがセサミストリートに出てたような気がするなあ。それもザ・セクションの連中ひきつれて、です。あのときは何を演奏したんだっけなあ。

2004-05-24 IDEOとジェフ・ホーキンズとVisor Edge

かなりの人が読んでいるはずなので誰かが取り上げるだろうと思っていたけど、誰も触れないようなので... CNET Japan Blogの梅田望夫さんが5月20日付のエントリで、米国のデザイン会社IDEOを取り上げています。

Palm使いにとってIDEOと言ったら、もう何といっても名機Palm Vの筐体デザインを担当した会社ですよね。

PilotにはじまるPalm社製品は最初のうち、かなり無骨なデザインというか、基盤と液晶をくるんだだけみたいな少々チープなプラスティック製の筐体を持っていました。そこに登場したのがPalm Vは、きわめてエレガントにデザインされた金属製のケースに包まれた、今までと明らかに違う製品でした。

Palm Vはまた、その存在が噂されながらも、何故か市場に送られない謎の製品の時期が長かったのです。一時はPalm社幹部から、発売予定はおろかその存在そのものすら否定されたくらいでした。

このあたりをめぐる経緯は、当時のPalm社内の確執と関係があったようです。コードネームでRazorと呼ばれたPalm Vを開発し製品化を目指していたのは、ジェフ・ホーキンズらPalm社の創業者たちでした。一方で親会社3Com派の幹部は、後にPalm VIIとなるワイヤレス路線にこだわっていました。

当時の主力機種だったPalm III系の機種がまだバカ売れを続けていたこともあって出番はなかなか来ませんでしたが、結局Palm Vとして発売されたRazorは、市場から熱烈に迎えられます。次世代のVxになって十分なパフォーマンスも持つようになり、長く売れ続けてPalm社を支えました。

とはいえその後も社内の確執は続き、ついにホーキンズらは自らが育てたPalm社を去って、新たに立ち上げたHandspring社でもう一度、彼ら自身のハンドヘルドマシンを製品化します。これがVisorシリーズですが実はVisorのデザインも、IDEOが手がけているのですね。

こちらは5色のカラフルでトランスルーセントなケースに身を包んだ、Palm Vとも全く違うデザインテイスト。この初代Visorも非常に売れた機種となりました。IDEOのデザインは明らかに成功に貢献していると思いますが、彼らが起用されたのも多分Palm Vでの仕事を気に入ったジェフ・ホーキンズらの意向じゃないでしょうか。さらに彼らは新しいTreoシリーズ初号機のデザインも手がけています。

どうやら新しいシリーズを立ち上げるとき、ジェフ・ホーキンズはIDEOに話を持っていくのが好きみたいですね。でもこれらの他に、もうひとつ謎の製品があります。Visor Edgeです。Visorという名を持ちながらVisorシリーズのアイデンティティであるSpringboardスロットを持たない謎のVisorだったわけですが... これもIDEOが手がけています。

Visor Edgeはクールな雰囲気を漂わせる金属製の筐体デザインが売りでした。そのために無理してSpringboardを装着すると裏にはみ出るという不思議な商品でもありました。非常に魅力的でしたが僕は当時、何でまた突然にこんな仕様の製品が出るのかよくわかりませんでした。

でも最近になって、ふと思ったことがあります。ジェフ・ホーキンズがPalm V(みたいなハンドヘルド機)をどうしてもまた作りたくなって、同じIDEOに頼んでデザインさせたのがVisor Edgeなのではないかと。

まあ実際にそうなのかどうかは分かりません。本人に会うくらいのことをしないと確かめようもないし。でもこう考えてみると、Visorシリーズ内のEdgeの不思議な位置づけや、発表時のあの唐突感も、なんとなく説明できるような気がするんですよね。

2004-05-26 本当にiTunes Music Storeは儲からないのか

このところExcite Music Storeだのエニーミュージックだのと、日本でもデジタル音楽のサービスが増えました。でもそれぞれのサービス内容を見ると、かなり強烈なコピープロテクトがかかっているようで。iPodユーザとしてはiTunes Music Storeにも早く来てほしいんですが、この流れを見てるとちょっとまだ来そうにないなあ、という気がします。

というのも、前にも書いた気がしますけどiTunesと音源の著作者側との間でコピープロテクトまわりの仕様というか、基本的な考え方に差がありすぎて、しかも歩み寄る気配が全然なさげなんですよね。例えばAV Watchの以下の記事なんか見てると。

エニーミュージック、サービス開始に向けラウンチパーティを開催
−“AppleはiPodを売りたいだけ”とレーベルゲート高堂社長

http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040518/anym.htm

対抗意識丸出し。なんだかここまでくると、もうビジネスというより宗教っぽいですな。是非ともMoraにはiTMSをはるかに超える実績を日本で示してもらいたいものです。あーでも米国に「シングルの文化が薄い」のは、日本のマキシシングル程度の価格で向こうではアルバムが買えるからじゃないのかなあ、とか書いてみようかな。

というより例えば米国の音楽業界誌Billboardにも大昔からちゃんとSINGLE HOT100はあるし、ベストヒットUSAの小林克也に確かめるまでもなくシングル盤の文化が薄いということはないですよね。売り物としてのシングルCDが無いだけじゃないですか。あんまりいい加減なことは言わないほうが良いと思います。

2004-05-27 本当にiTunes Music Storeは儲からないのか(2)

昨日のネタは本題に入る前に終わってしまいました。実は「iTunes Music Storeは売れても儲からない。iPodを売るためにやってるだけ」なんて見方が、最近なんてのか自明のこととして信じられてるように思うんですよね。きのう紹介した記事ではソニーの人までそう公言してる。考えてみるとちょっとすごいよね。

でも、それって本当なんだろうかって気も、個人的にはしてるのです。なんか分かりやすすぎて、誰も真剣に検証してないような気がしませんか?

なのでいくつか、まぜっ返すためのネタをあえて、挙げてみましょう。

iTunes Music StoreってのはすべてiTunesってアプリのウィンドウの中で完結するってのが売りですけど、実態はインターネット経由で音楽のデータファイルを販売するサービスだってのは誰もが知ってることです。ITな人のコトバでいうとEコマースってやつでしょうか。

だからiTMSってのは、他のEコマース事業と同様に設備産業なのは、これもよく考えてみるとわかることで。となると現段階つまり初年度の売上だけで黒字になれば極めてハッピーだとは思うけど、通常だと立ち上げる側の人は、事業の成否をもっと長いタイムスパンで考えてるんじゃないかと思うんですよね。

逆に言うと、今の段階でMusic Storeの事業が単体でプロフィッタブルじゃないとしても、それって当たり前じゃんて気もするんですよ。今や勝ち組だと誰もに信じられてるamazon.comにしたって、初めて黒字を計上するまでに何年かかってるか、思い出せる人は思い出してみてください。

2004-05-27 本当にiTunes Music Storeは儲からないのか(3)

昨日の続きです。Music StoreもEコマース事業である以上それは設備産業なのだから、中の人も初年度から黒字なんて最初っから考えていないかも、なんて話をしました。でも装置産業って意味からすると、アップルの場合、他社と比べて有利な点が実はあるのですね。

Apple Storeのことです。もともと小売店でMacは冷遇されてるので、アップルでは必要上、以前から直販に力を入れていました。今では銀座みたいな直営店もありますが、主力は直販サイトによるオンライン販売です。

Music Storeをはじめる前にこのApple Storeがあったは重要です。iTMSを始めるためのインフラは、最初からある程度そこにあったはずで。もちろんそれなりに立ち上げのコストはあったにしても、少なくともゼロから構築するよりは、相当に楽だったと考えてよさそうです。

これって物理的な設備投資ばかりじゃなく、たとえばカード決済にしても、すでに相当のボリュームをオンラインでさばいているアップルはカード会社から見たら非常に優良な加盟店であるはずなので、決済等々の手数料率にしても、それに応じて有利なレートの適用を受けていると思われます。

一方ぽっと出の企業で同じようなことをしようとしても、まずカード会社の加盟店になるのが大変で、なっても最初のうちはもう悲しくなっちゃうくらいの手数料率を受け入れなければならないのが普通じゃないですかね。儲けの薄い商売だと、このへんはかなり辛いはずで(だからiTMSに刺激されて参入を考えているとされる会社は、どこも既存のリソースをある程度利用できるとこばかりですよね)。

なので、元々アップルにはMusic Storeをやるのに有利な条件が、結構そろってたと言っていいように思うんですよ。だから今の好調がずっと続くかどうかはわからないにせよ、うまくやればこれらの好条件を生かしてそこそこ儲かるまで持ってのいくのも、世の中で言われてるように無理だとは、あながち言い切れないような気がするのです。


※内容は、日記を書いた当時のものです。


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