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Gunung Mulu National Park, Sarawak, Malaysia

- Climbing -

登山 - ピナクルへ

翌朝,アピ山に登る.景勝地ピナクルが目的だ.キャンプの食堂で朝飯を食った後で,雨具と水など必要な持ち物だけ持って出発.下の写真は出発する朝のキャンプ5の様子.霧が出てる.

歩き出してすぐ山道に入る.最初からわりと急な道だ.どんどん進む.前日の雨で地面はやはりぬめっている.とりあえず天気は曇り.暑くならなさそうなのはありがたいが,今日も雨は降るのだろうか.ともかく歩く.歩く.歩く.

確かに昨日の道はフラットだったかもしれない.今日のはキツいなんてもんじゃない.足回りは前夜のガイドの忠告に従って登山靴に短パンという格好にしたんだけど,その意味がわかった.勾配がキツいから足というか腿が上がらないと辛いのだ.たとえジャージみたいな素材だったとしても,すぐに脱ぎ捨てたくなるだろう.生足で歩いているとヒルがくっついてきたりもするのだが,そんなことはもうどうでもいいと思える.

歩き出して1時間もしないうちに,頭の中にどんよりとした不安がよぎるが,ここでそんなこと考えたら負けなので,ただひたすらに歩く.

ジャングル内の山道

道というような道があるわけじゃなくて,途中の木の幹にこんな赤白のサインがつけてある.これをたよりに歩くんだ.歩くというか,掻き分けて登るというか.だから落ち着いていれば道に迷うことはないのだけど,景色は終始こんな感じで登ってもあんまり変わらず,下界の眺めが楽しめるような場所は皆無に近い.

上の写真は,めずらしく眺めのある場所に来たので撮ってみた.しかし下を見ると今いる場所の高さとその間の勾配の急さを突然生々しく感じる.かなり恐いので見えないほうがいいのかもとも思い,さらに先を急ぐ.

というか,休めるような場所自体がないんだ.途中に一個所だけ,数人で落ち着けるような場所があったのだけど,そこに至るまでと,そこからピナクルまでは,もう細い立っているだけで精一杯のけもの道しかなくて,休みたくなったらもう適当にそのへんに腰をおろして休むしかない.それでも腰をおろせるような場所があればまだ良くて,このあたりの岩はすでにピナクルみたいに鋭くギザギザにとんがっていて,不用意に腰も下ろせない.

ピナクルに向かいよじ登り中

小休止後しばらく歩くと,道はさらにキツくなった.垂らしてある綱を握って登る場所,ハシゴをよじ登る場所.ハシゴ場は合計15個所あるらしい.さらに行くと,岩壁に打ち付けている鉄の足場を踏んでよじ登る場所.もう何がなんだかわからない.とりあえずカメラとかはどうでもいいから生きて帰りたいと,名前もしらない土地の神様に願う.

とはいえしっかり撮ったウツボカヅラ

ガイドが道の脇に大きなウツボカヅラを見つけて写真を撮れとすすめてくれたりするのだけど,正直言ってとっとと先に行って早く休みたいっす... などと沈痛な心地でそれでも登りまくっていたところ...

突然ちいさな岩盤みたいなところにたどりつき,そこからガイドが指差すままに向こう側を見たらそれがピナクルだった.良かった.なんとかたどりついたよ.うおー感激だ!

やっとたどりついたピナクルには霧が...

しかし... 確かに名所なのはわかるけど,見ているとなんか寒々とした気分になるな.雲が垂れ込めていて山の頂あたりが全然見えなかったりするせいもあるんだろうけど,なんか賽の河原ちっくな感じ.というか死ぬ思いで山を登り終えたら,そこは針山地獄だった,というか.

写真を撮り,昼飯.激烈に腹が減っていたし,喉が渇いていた.ガイドが持って登ってくれたジュースが死ぬほどうまい.しあわせ.辛かったが飯も勢いで食ってしまう.食い終わり,ひとしきり写真も撮り終わると,ここはとても狭くて何もやることが無いので,そそくさと下山.なにしろミニ三脚すら立てるスペースがないんだ.ところが下りがまた大変で.

昨日の雨で基本的に足元はよく滑る上に,今度は下りなので前方を見ずにおずおずと這い降りるとか,もう訳がわからない状態.当然写真どころじゃなく,無言でまたひたすら歩く.歩く.歩く.そして下山途中でまた雨が...

結局キャンプに戻ったら,出発してから 10時間以上経っていた.いっしょに登った人たちは辛すぎて途中で引き返したり道で転んだりしたみたいだけど,なぜか僕だけはかすり傷くらいで済んでいた.良かった.これで東京に帰れると思うと,しみじみ嬉しい.ピナクルにたどり着いたときよりも,もっと嬉しかった気がする.

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